あんみつ村 x 夢見レポート
あんみつ村訪問記　２ｐ

作成 2013/04/08 18:14

一番最初に目に入ったのは、桃色のベルとその下に並べられた家具だ。
その家具に目を凝らすと、この村の動物達の写真である。周囲にはベルの色に合わせてか桃色の花が咲いており、一見は友情を讃えているような長閑な景観だ。
しかしあの広場を見てからでは、この六つの写真とベルの組み合わせに不安を感じずにはいられない。
ここで私は早速あることに気付く。なんと動物達の家の裏に、十字架の石版と花、そして怪しい地面の亀裂があったのだ。

恐る恐るそれを掘り返すと……その家の動物の写真が埋まっている。近くの家の裏にも同じく写真が埋められており、私は一層この村の探索が恐ろしくなった。動物から貰う写真は、後生大事に称えるべきものであるというのに……これを埋めた者の意図が理解できない。
いや、これはまだほんの始まりに過ぎない筈だ、とここで私はそうも思った。これでも愛読書は怪談集やあのシェアード・ワールドなのだ。少しの恐怖的演出があったからと言って逃げ出すようでは名が廃る。もっとも私に廃って困る名などありはしないのだが…。

少し歩くと、石造りの橋が見える。この橋の先に村民の家が複数建っているようだが、それはこの橋がこれから体験するであろう恐怖への門であるかの如く佇んでいた。
橋に置かれたこのスコップは、何を意味するのだろう？
私は重い一歩を踏み出し、この村の混沌へと沈んでいく。

一番近くにあった家へ入り込むと、洋風の様式――それも酷く古めかしく荒れた――が私を出迎えた。
玄関向かって西の部屋には、向かい合わせられ奏でることの出来ないグランドピアノが、
奥の部屋には廃墟のような教会風の部屋があった。机には「だいすき」のオルゴールとお香が置かれ、まるで葬儀の会場のような雰囲気を漂わせている。物悲しげなオルゴールの音色と、水漏れの音が私の背筋を軽く震わせた。

また怖気を引いたのは地下室だ。毒々しい紫色の蝶々の壁と床、壁一面に貼られた蛹のデザイン、そして捕えられた色とりどりの蝶々達……部屋中央では黒い服を召した人形がミシンを動かしている。左右にはハープが置かれ、これがあたかも人形の羽根のように光っており、私はこの表現に対し素直に感銘したものだ。

しかしこの家の真髄は、二階の部屋にある。
二階は懐かしい学生の教室風の部屋で、学生と思しきマネキンがなにやら楽しげに顔を合わせている。さぞ仲睦まじい二人なのだろうが……かねてから感じていた嫌な予感はやはり的中する。
それはふと部屋の西側を向いた時だ。目線の先に立つ机には、腐り切った野菜が置かれ、それを青い面をつけたマネキンが眺めている。
それが物語る状況は、部屋の隅に自分の机を追いやられ、汚物を置かれ、それをじっと見つめる机の持ち主と、見て見ぬ振りで楽しく会話するクラスメイト……なのだろう。
これが意味するものは……私は胸が悪くなった。

家を後にすると、家の持ち主を見かけたのだが、「......inonanekadatietim」と訳の分からない挨拶をされたので、黙って先へ進んだ。

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